アタシポンコツサラリーマン

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【マンガ】圕の大魔術師 〜なぜ本作は一冊で多くのマンガファンの心を捉えたのか〜

こんにちは! いさおです。

やっとこさゴールデンウィーク、ブログ更新にこぎつけました!

 

 

前2記事はアニメの感想でしたが、

今回は初めてマンガの感想を書いてみようと思います。

 

今回取り上げるのは

 

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「圕の大魔術師」

 

です!

 

としょかんのだいまじゅつし、と読みます。

 

 

 

1.まえがき

 

本作、2018年4月現在マンガファンの中ではちょっとした騒ぎを引き起こしています。

何といったって面白い。

作画が圧倒的、世界観が綿密、気持ちがいいほどの王道。

様々な言葉とともに高評価を欲しいままにしています。

 

そこでひねくれた私は思うのです。

ほんまにそんなに面白いんか?、と

みんな他の人につられて絶賛してるだけとちゃうんか?、と

 

んで読んでみました。

 

 

 

 

 

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めっちゃおもろいやんけ、と

 

即落ち2コマ

 

 

 

 

しかしめっちゃおもろいやんけ、となるだけではもったいない。

なぜここまで面白いのか、

なぜ本作はたった一冊で多くのマンガファンの心を捉えたのか、

自分なりにうんうん唸ってみました。

少しの間、お付き合いいただけたら幸いです。

 

 

 

2.あらすじ

 

主人公は貧民街に住む少年。

白すぎる肌と、尖ったような長い耳を持っており、

クラスメートからはいじめられてばかりでした。

 

そんな少年の楽しみは、

貧民は使用を禁じられている町の圕に忍び込み、心躍る冒険譚を読むこと。

冒険譚で活躍するような「主人公」がいつか自分の前にも現れ、

この嫌な世界から自分を冒険へ連れ出してはくれまいかーーー

そう夢見る日々を過ごしていました。

 

そんな中、少年の住む町の圕に、中央圕から司書が派遣されてきます。

「カフナ」と呼ばれる彼女らの目的は、どうやら町の圕の視察。

少年はひょんなことからカフナの一人、セドナが大切にしていた本を読んでしまい、

その物語の世界に一気に引き込まれてしまいます。

そしてその少年の姿を見たセドナから、その本を貸してもらうことになります。

セドナこそ、嫌な世界から自分を連れ出してくれる「主人公」なのではないか、

そう少年は考えます。

 

しかし、町の圕の館長から、その本を圕から盗んだと誤解され、

館長はその本を奪って圕に持って帰ってしまいます。

少年は、自分には「主人公」の仲間たる資格なんてない、

物語に「町は群衆で賑わっていました」という一文があったとしたら、

「群衆」の一人でしかない、

そうひどく落ち込んでしまいます。

 

その夜、町の圕で原因不明の火事が発生します。

このままではセドナが大切にしていた本も燃えてしまうかもしれないーーー

そう考えた少年は、なりふり構わず圕へ走り出します。

 

 

 

 

3.本作の魅力 

(1)あまりにも丁寧な世界観と画風

冒頭にも挙げましたが、これは外せないでしょう。

 

世界観については、例えばこのシーン。

 

 

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当然本の修復は本作のメイン内容ではないのですが、

そこにここまでのエネルギーが注ぎ込まれています。

 

このように細部までとことん設定が詰められていますと、

この世界は本当にどこかに実在しているのではないか、

思わずそう感じてしまいます。

 

また、作画については表紙を見ていただきますと言わずもがなでしょう。

 

 

(2)少年のメタ的な視点

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あらすじにも書きましたが、

少年は「物語」というコンテンツに熱中するあまり、

頻繁に「この世界が物語だったら」という考え方を見せます。

 

でも実際この世界、「圕の大魔術師」という「物語」なんですよね笑

 

ゆえに、少年の視点は、いわば読者の視点と同じ位置にあるとも言えます。

「圕の大魔術師」という物語とその一キャラである少年自身を、

少年は一歩離れた場所から、観客のように眺めています。

 

ここで本作の内容に話を戻しますが、

皆さんお察しの通り、少年が紛れもなく本作の主人公です。

本作は、自分は少年Aでしかない、と自覚する少年が奮起し、

名実ともに主人公となっていくお話なのです。

 

 

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冴えない主人公が勇気と努力をもって英雄となっていく、

気持ちいい王道です。

他でもなく読者と同じ位置に並んでいたはずの少年が、

その血湧き肉躍る王道を実現してみせる。

そんな様に、私たち読者が、勇気をもらわずにいられるでしょうか。

 

 

ちなみに、少年の名前(シオ)は、1巻の最終盤でやっと判明します。

「少年A」が「主人公シオ」になった瞬間です。

ニクい演出しますねほんと・・・

 

 

 

(3)読者の「本作を読む」という行為が、そのまま本作のテーマを体現する

というわけで、本作はシオくんが名実ともに主人公になっていくお話なのですが、

そのきっかけは紛れもなく「書」です。

 

特にセドナの本に触れてしまったシオくんは、

その本の中の世界に一気に魅了されてしまいます。

 

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また、それまでもシオくんは町の圕で多数の冒険譚に触れており、

冒険譚の英雄に憧れ、やがて自ら冒険譚の英雄になる道を選択します。

 

つまり、

「書」とは別世界への扉であり、

その別世界には、現実世界における自らの生き方を変えてしまう力があるのです。

これは、本作の重要なテーマの一つです。

 

「書を護ること それ即ち世界を護ることなり」

という言葉が本作には登場しますが、

この言葉の意義の一つが、上記赤字部分であると私は解釈しています。

 

 

さて、本作を読んだあなたは、どうなりましたか?

少なくとも本作を絶賛しているマンガファンは、

本作の圧倒的な世界観に感化され、

「王道」たるシオくんの生き様に感動しています。

 

本作は、あなたの生き方を、考え方を、世界観を、少しでも変えていませんか?

 

 

基本的に物語のテーマ性というのは、

そのテーマを具体化したエピソードを物語が提示することで、獲得されるものです。

 

しかし、本作は「書」をテーマの根幹に置いていることで、

本作のエピソードがテーマを体現しているだけではなく、

「圕の大魔術師」という「書」を読む私たちが、そのテーマを体現することができる、

稀有な作品になっています。

 

このテーマはシオくんが伝えてくれたものなのか、

自分が体現して理解したものなのか、

わからなくなってくる。

テーマの提示において、2次元と3次元の境界が曖昧になってくる。

私はこの作品を読んで、まるで「乗り物酔い」のような感覚に陥りました。

 

 

 

 

 

4.終わりに

 

以上、なぜ本作は一冊で多くのマンガファンの心を捉えたのか、

通勤中満員電車でうんうん唸って出した一応の答えです。

 

いや何言ってんねんwwwと思った方も、そういう考えもあるか、と思ってくれた方も、

どちらもいらっしゃるかと思います。

 

いずれにしろ、

「圕の大魔術師」はめっちゃ面白い!!!

これは事実です!

 

本作、

「原作『風のカフナ』 著 ソフィ=シュイム 訳 濱田泰斗」

と表紙に書いているのですが、

そんな作品も、著者も、翻訳家も現実に存在しない、

という大きな謎も残されています。

 

 

ぜひ、この「圕の大魔術師」の世界の「扉」を叩いてみてください!

 

ここまでお読みいただきありがとうございました!!!

 

 

(終わり)