【マンガ】私の少年 5巻 感想 〜ふたりが手札を晒した先にあるもの〜
こんにちは、いさおです。
最近スタァライトされちゃいまして少女⭐︎歌劇レヴュースタァライトの記事ばっか描いてた気がするのですが、今回はひさびさにマンガの記事を書きます!
というのも、「私の少年」5巻がすばらしかったのです!
このマンガがすごい!2017オトコ編で2位にランクインして一躍有名になった本作、妙齢の女性聡子さんと、美少年真修くんの交流を美しい作画で描く、本格ヒューマンドラマです。
大人の女性と少年、というとまず思いつくのがおねショタというジャンル名なのですが、その言葉だけで本作を語るのは憚られる程、二人の内面を精緻に描いた、丁寧な作品です。
3巻で社会的な事情により離れ離れになった二人は、3巻末で偶然の再会を果たします。
そして4巻では、これまで聡子さん視点で描かれていた物語が、初めて真修くん視点で語られる展開となりました。これにより、読者は改めて、二人の社会的立場、価値観の乖離を見せつけられることとなります。
その上での、5巻。
読んでいろいろなことを思ったのですが、感じたのは大きく分けて以下2点でした。おつきあいいただければ幸いです!
※ 以下超ネタバレ注意です!
1 二人のすれ違いの根の深さ
真修くんによくしてあげたいという思いと、社会通念上深入りが許される立場ではない、という事実のジレンマに苛まれていた聡子さん。
成長した真修くんを見て、聡子さんはそのジレンマを真修くんにぽつりぽつりと吐露します。
このジレンマのせいで、聡子さんは真修くんに対しどっちつかずな対応に終始していました。散々関わって、真修くんに懐かれた末に、突然の別れ。
このせいもあって真修くんはまだ自分を追い続けている、と聡子さんは自覚しています。そこで聡子さんは、自分の思いをしっかり告げて、一度は別れを決意した真修くんと、「健全な」形で関係を続けていく選択をとります。
自分の思いをしっかり見せることで、お互いの理解が進み、状況が好転するものだと信じて。
しかし、そんな聡子さんに真修くんから告げられたのは、衝撃の一言。
人が本当の意味で関係を築くには、互いが心に持っている思い(以下、これを「手札」と呼びましょう)を相手に開示する必要がある、これは間違いありません。
しかし、ここには大きな問題が二つあります。
一つは、手札の開示という行為自体が、非常にハードルの高い行為であること。
手札を隠しているからこそ円滑に進む関係、というのもあるでしょう(仕事上の付き合いとかは完全にこちらです)。手札の開示は、そんな状況を壊してしまうリスクがあります。また、手札が、嫉妬など恥ずべきものであるなら、手札の開示にはプライドを捨て去る必要があるでしょう。
二つ目は、そんな障害たっぷりの手札の開示も、人間関係の構築のスタートラインに過ぎない、ということです。
手札を開示されたことで、自分は相手の秘めた一面を認識します。その一面は、もしかしたら想像もしていなかった、すぐには受け入れがたいものかもしれない。その場合、相手という人間を理解し直し、これまでとは異なる形での向き合い方を模索せざるをえ得ません。その長く苦しい模索の末に、ようやく人間関係は、あるべき形に落ち着くことができるのです。
もちろん、この二つの問題は、場合によっては簡単に克服できるものだと思います。学校の同期などは、これまで同じような環境で育ってきた人が多く、もともとフランクであるべき関係ですので、往々にしてこの二つの問題はクリアできます。
でも、バックグラウンドや価値観の違う二人がこの問題を克服しようとすると、これは非常に難しい。例えば、33歳の女性と、15歳の少年の場合だとか。
聡子さんと真修くんは、5巻でようやく「手札の開示」という一つ目のハードルを克服しました。
しかし、長い葛藤の末にたどり着いた手札の開示の向こう側にあったのは、想像以上に深い、互いの立場の乖離だったのです。
二つ目のハードルがあまりにも、高い。
こうした、33歳の女性と、15歳の少年が関係を築く際に想定されるハードルを、本作は丁寧に、丁寧に描いています。
その丁寧さにはただ圧倒されるばかりですし、その丁寧さがあるからこそ、二人の織りなすドラマに、強く感動してしまうのです。
2 二人の手札の見せ方の上手さ
手札、という話を続けます。
本作、二人が持っている手札の開示の仕方に技がある、と私は考えます。
互いの手札の開示のタイミングは、以下のとおりです。
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聡子さんの手札 ・ 真修くんとの関係を続けたい ・ 社会通念上まずいとも思う ・ あくまで健全な関係にしたい |
真修くんの手札 ・聡子さんのことを女性として好き |
制作段階 |
作者には開示済み |
作者には開示済み |
1〜3巻 |
読者に開示 |
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4巻 |
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読者に開示 |
5巻 |
真修くんに開示 |
聡子さんに開示 |
当然ながら、作者はそれぞれの手札をすべて認識しています。
その上で、作者はまずそれぞれの手札を段階的に読者に開示していきます。これにより、同じ物語でも、登場人物によって見えているものが全然違っていて、持っている手札も全然かみ合っていない、ということを、読者に理解させるのです。
その上で、5巻で登場人物同士に手札を開示させる。
これによって、読者は、二人の直面している試練の困難さ、根深さをより一層認識できる仕組みになっているのです。
物語の全体的な構成も、本作がヒューマンドラマであることと深く繋がっている気がして、高野ひと深先生の職人技にひれ伏すばかりでした。
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以上、「私の少年」5巻感想記事でした!
おねショタを突き詰めると、こんなにももどかしい世界が広がっているのだな・・・(?)と毎巻圧倒されるばかりです。
どうか聡子さん、真修くんが、二人にとって一番いい形での関係にたどり着けるよう、祈りながら次巻を待つばかりです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
一つ言い忘れてました、聡子さんの妹さんかわいいがすぎません?
(おわり)