アタシポンコツサラリーマン

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【ネタバレ注意】Fate/stay night [Heaven's Feel] Ⅱ. lost butterfly 感想 〜桜の本当のすがた〜

こんにちは。いさおです!

 

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今日Fate/stay night HFの2章を見てきたんですが、いやあ、本当に、本当にとんでもない圧の映画でした!こんなに圧倒されるのはなかなかありません。

1章も良かったですが、正直、2章はそれを上回る凄みがあります。1章をジャンプ台にして、一気に加速させてきた感覚です。

その凄みには当然ufotableの誇る圧倒的作画力、そして梶浦由記さんの素晴らしい音楽も寄与しているのですが、この記事で文字にしておきたいのは、ストーリーや表現のお話です。

 

1.本作のストーリー

世界を救うか、女の子を救うか。

この二者択一は多くの作品で取り上げられてきたテーマですが、士郎は本作終盤で、まさにこの二者択一に直面することとなります。本作はその状況に至るまでの、士郎と桜の関係の変遷を描くものです。

1章から2章序盤にかけて、桜の幼少期からの壮絶な境遇が明かされます。その境遇から自らを「汚れた身」と称する桜は、自らから他人を遠ざけます。

そんな桜を士郎は受け入れ、二人はつかの間の平穏を手に入れますが、最後に明かされるのは、「謎の影=桜」という残酷な事実。二人の関係は、再び岐路に立つのです。

 

そんな紆余曲折の当事者、桜と士郎の描写について、印象的だった二つのシーンに注目します。

 

2.「かりそめの幸せ」としてのセックス

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中盤の濡れ場は、本作を見た方誰しも、少なからず印象に残ったのではないでしょうか。普段控えめな女の子が欲望をあらわにするというのは、わかっていても非常に扇情的です。

もちろんそういう意味で本シーンは一つの見せ場なんですが、ただのサービスシーンとしては片付けられない雰囲気を、本シーンは纏っていました。具体的には、士郎と桜の平穏が「かりそめ」のものでしかないことを、逆説的に、印象的に表現していたと感じます。

 

物語で描かれるセックスって、2種類の意味合いがあると思います。

一つは、恋愛の終着点としての意味合いです。愛する二人が最後に辿りつくのがセックスである、との考えの下、物語において、セックスはハッピーエンドを表す手段として用いられることが多くなります。終盤に幸せな濡れ場がある恋愛もの、皆さんも一つは心当たりがあるのではないでしょうか。

二つめは、全く逆の意味合いです。すなわち、「かりそめの幸せ」の象徴として、セックスが使われることもあります。

上記の通り、セックスはハッピーエンドの象徴です。だから、セックスすればハッピーを手にすることができる。そう信じて、人はしばしば容易な道でそれに手を伸ばします。行きずりの関係、風俗、などなど。しかし、その時は幸せでも、それで次の日以降も幸せになれるかといえば、決してそうじゃない。心は満たされていないから、すぐに次の交わりを求めてしまいます。底に穴の空いた鍋に水は張れないように、この手の人間は、「アンハッピー」なのです。

こうしたパターンのセックスを物語に挿入すると、それは「かりそめの幸せ」、それ以上に「不幸」を象徴的に表す手段に変貌します。

 

本作の濡れ場は、まさにこの後者のパターンとしての展開だった、という印象です。同居再開直後の桜の不安定な心模様、そして魔力不足も手伝って、士郎は半ば押されるように、桜を抱きます。そうすることで、桜は「ハッピー」になれると信じて。

桜の影に見覚えのある歪みを感じて、そこから目を背けながらだというのに。

早すぎる交わりに潜む、確かな歪み。一見サービスシーンに見える展開に二人の平穏の崩壊を感じ、強い緊張感が走ったいいシーンでした。

 

 

3.夢の世界での人形との交流 〜桜の本当のすがた〜

こちらはさらに強く印象に残っています。本作主題歌、「I beg you」のCDジャケットにもなっているシーンであり、本作の核心にも迫る重要なシーンです。

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桜はいつの間にか、人形さんが楽しく踊る夢の世界に。桜は楽しく過ごしていましたが、お城の中で人形に囲まれ、周りの人形は桜をバカにするように笑ってきます。むかっとした桜は、試しに人形をデコピンしてみると、人形は弾けてたくさんのアメに。楽しくなった桜は、全ての人形を弾けさせてしまいますが、実は現実では、その間桜は無意識に、人間を木っ端微塵にしていた・・・というホラーな一幕です。

 

このシーンでは、ずっと暗い顔をしていた桜が、楽しそうに、無邪気に笑っています。そのギャップにも少し驚かされるのですが、それにしてもこのシーンの桜、ちょっとおかしいです。お人形さんたちと踊って、無邪気に笑って楽しむ。ちょっと気に入らないものが出てきたら、ちょっかいを出して消してしまう。

あまりにも、子供ではないですか。

 

しかし思うのです。この子供じみた振る舞いこそ、今の桜の真の姿なのではないかと。

現に、桜が人形をアメにしていたシーンでは、そのまま現実で人を解体していました。桜は、気に入らないおもちゃを壊してしまう子供のように、気に入らない人間を無意識のうちに殺していたのです。本作終盤では、ついに兄・慎二がその凶刃にかかります。

とすると、桜について、「内気でかわいそうな少女」という一般的な理解とは、また別の理解が可能になります。他人(例えば士郎)には子供のように甘える一方、気に入らないものはめちゃくちゃにする存在。愛を請う仕草も、つつましい雰囲気も取り去って、「内気でかわいそうな少女」という皮を剥がすと、そこにはただの子供が、たたずんでいるのです。

 

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そんな桜の中身は、桜という少女の境遇を考えると、むしろ自然なものです。幼少から実の家族と別れ、刻印虫にその身を陵辱されるばかりか、兄に暴力を振るわれ続けた毎日。一方で中学以降は、士郎や藤ねえといった、事情を知らない人間の一方的な庇護を受ける日々。彼女には、本当の自分を知った上で、自分を育ててくれる人間が、誰一人いなかったわけです。そんな彼女の精神が、果たして子供の域から脱し得るでしょうか。

 

突然のシーン転換で見る人の目を引きつつ、桜の中身を間接的に、印象的に示す一幕として、夢の世界のシーンは非常に工夫が凝らされていたように思います。

 

 

4 まとめ 

以上、印象に残ったシーン2点の感想でした!

特に2点目は、桜の本当のすがたを明らかにする端緒となる、非常に重要なシーンでした。

 

さて、そんな桜を救うために必要なのは、一体何なのでしょうか。当然悪意ではありません。かといって、墜ちた小鳥にそっと触れるような、単純なあわれみでもない。

それは、桜の中身を理解した上で、いいところを褒めて、悪いところは叱ってくれるような、桜に対する本当の愛情です。

 

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「もし、わたしが悪い子になったら先輩は叱ってくれますか」

とかつて桜は言いました。

それに対して士郎は、

ああ。桜が悪いことをしたら怒る。きっと、他のやつより何倍も怒ると思う」

と応えます。

 

この愛情こそ、今の桜に必要だったのだと思います。

変わり果ててしまった桜を、士郎は取り戻すことができるのか。

3章が待ちきれません!

 

 

最後に。

本作の主題歌、「I beg you」の歌詞を是非改めて聴いてみてください。この歌が何を歌った曲なのか、きっとお分かりになるはずです。

 

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以上、お読みいただきありがとうございました!!!

 

 

 

 

 

(終わり)