アタシポンコツサラリーマン

ポンコツサラリーマンが、マンガ・アニメについてつらつらと書きます。不定期更新ですが、気が向きましたらぜひぜひお立ち寄りを。

【マンガ】マギ 〜キャラが自力で勝ち取ったエンディング〜

こんにちは、いさおです。

 

会社の寮住まいなので、部屋が狭く、金銭的な意味よりもスペース的な意味でマンガを買うのを躊躇することがある今日この頃です。

この前やっと電子書籍デビューしました。

 

 

 

1.  はじめに

 

というわけでマンガは単行本派で、雑誌はほとんど買わないんですが、最近は個人的に週刊少年マガジンがアツいです。

 

まず良質ラブコメを多数擁してますよね・・・!

五等分の花嫁、ドメスティックな彼女、彼女お借りします、川柳少女寄宿学校のジュリエット、などなどなど・・・

 

また、最近は話題の新連載が立て続けです!

化物語キスアンドクライ、This man、などなどなど・・・

 

そんな中、今週2018年5月30日(水)発売のマガジン第26号、

待望の新連載がついにスタートします。

 

その名も「オリエント」

 

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そう、すもももももも」、「マギ」で有名な大高忍先生の新連載です。

 

 

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上記2作は両方読みましたが、その中でも「マギ」は人生ベスト10に入るほど、大好きなマンガの一つです。

 

新連載も始まるということで、このタイミングでその「マギ」の記事を書くことにしました。

 

私が個人的に考える、「マギ」という作品のすごみを伝えられる記事にしたいです。

 

 

※※※ ちなみにネタバレ無制限の記事です。ご注意を・・・ ※※※

 

 

 

2.  あらすじ

世界に「迷宮(ダンジョン)」と呼ばれる謎の構造物が多数存在する世界。

迷宮をクリアすると、莫大な富が手に入るのだという。

 

主人公のアリババは、行商人のもとで下働きをする中、近くにある迷宮「アモン」の攻略を夢見る少年。

ある日アリババは、巨人を呼び出す不思議な縦笛を持った子供、アラジンに出会う。アラジンと意気投合したアリババは、不思議な力を持つアラジンを誘いアモンに挑戦、見事アモンを攻略し、魔神の力を封印した「金属器」を手に入れる。

 

その後アリババは、故郷である小国バルバッドへ向かう。

そこで7つの迷宮を攻略した英雄、シンドバッドと運命の出会いを果たす中、アリババは旧友が引き起こしたクーデタに巻き込まれてしまう。

旧友は黒い魔神を行使する謎の力でクーデタを進めるが、アリババはアラジンとともに金属器の力でクーデタを阻止、旧友とも和解する。

しかし、旧友は和解の瞬間、体全身が黒ずみ、死亡する。旧友のクーデタと謎の黒い魔神の力の裏には、やはり黒幕が存在したのだ。

 

世界を揺るがす黒い影の存在を認識したアリババは、黒幕の次なる一手、そして金属器や迷宮を生み出した世界の謎と向かい合うことになる。

 

 

 

 

3.  マギの魅力

(1) 一貫したテーマ性

全37巻完結済みのマギは、以下の通り大まかに6つくらいのエピソードに分かれるのかなあ、と勝手に考えています。

 

① 1〜8巻   アモン攻略〜バルバット編

② 8〜14巻   シンドリア編

③ 14〜20巻 マグノシュタット編

④ 21〜24巻 アルマトラン編(過去編)

⑤ 25〜29巻 煌帝国編

⑥ 29〜37巻 最終章

 

このように多種多様な物語で構成されるマギですが、そこにはある一貫したテーマが背骨のように突き刺さっています。

 

それは、

 

「この世に価値のない存在なんて無い、超越的な価値を持つ存在も無い 皆が平等に不完全である」

 

「だからこそ、間違いながらも、皆が力を合わせて、自分たちの道を決めていくべきだ」

 

というメッセージです。

  

例えば「③ 14〜20巻 マグノシュタット編」。

 

マグノシュタットという国は、魔法使いだけが暮らす、魔法使いの楽園です。

アラジンは魔法修行のため、この国の魔法学校に入学します。

 

しかし「楽園」とは表の姿で、この国の魔法は、地下の劣悪な環境で過ごす、魔法使いでない人間から吸い上げた魔力が元となっていたのです。

 

この国は、「魔法使いは魔法使いでない者よりも優れた存在」という価値観にとりつかれた学長の作り上げた、カースト構造に基づく国だったのです。

 

そんな学長も、終盤でこうこぼします。

 

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マグノシュタットを戦争に投じ、魔法使いも魔法使いでない者も問わず、多くの人間を死に追いやってしまった学長が出した答えです。

(ちなみにこのセリフのあとシンドバットがどアップなのは、とても好きな演出です)

 

マギが見せる、一見バラバラに見えるエピソードは、すべてこの「自分たちの道は自分たちで決める」というテーマへと繋がっていきます。

 

 

(2) テーマの追求の徹底

マギのテーマは上記の通りですが、この「自分たちの道は自分たちで決めていい」というテーマを徹底的に追求すると、結果的にどこに行き着くんでしょうか?

 

ここで考えていただきたいのは、「自分たちの道を勝手に決めようとする他者」とは具体的にどういう存在か、という問題です。

 

親?   確かに子供の進路に口を出してきますね。

先輩?  仕事の仕方だとか、口うるさいですよね。

上司?  先輩に同じくです。

政治家? 国民の生活のあり方に影響を与えてきます。

王様?  かつては王様の判断一つで国民の生活、それどころか生死が決まりました。

皇帝?  王様に同じくです。

 

だんだんレベルが上がってきましたね。

これを極限まで進めると、最後はおそらく「運命」だとか「神」といった答えが出てくることでしょう。

 

 

そうです、この作品、「神」や「運命」に勝つ話なのです。

 

 

「④ 21〜24巻 アルマトラン編(過去編)」で明らかになりますが、マギの世界は、とある事情で「神」と呼称される存在が不在の状態です。

そして、敵陣営の狙いは、不在となっている「神」を復活させ、人々の運命の手綱を再び握らせることなのです。

それが、不完全で、間違いだらけの人間にとっては結果的に幸福であるのだと信じて。

 

それに対し、アリババたちはあくまで、「自分たちの道は自分たちで決める」という姿勢を崩さず、敵陣営の動きを阻止するのです。

 

 

自らの道は自ら決める、そんなメッセージを込めた作品は複数あることでしょう。

 

しかし、そのメッセージを追求した結果、親、上司、王様を超えて、自らの運命を定める「神」との対決までを描いてしまった作品、他にはなかなかないのではないでしょうか。

 

 

(3)  テーマの追求の臨界点と、その克服

マギは、「自分たちの道は自分たちで決める」というテーマを徹底するあまり、キャラ同士を対決させるのでなく、「神」という、キャラの運命を決める高次元存在とキャラとを対決させました。

 

物語が何らかのメッセージ、テーマを読者に伝えるものであるとすれば、マギは「物語」の最終形態、完成形の一つであるといえるでしょう。

 

しかしこの、「神」という高次元存在を物語の中に登場させ、しかもその存在を物語の根幹に位置付ける行為は、ある意地悪な、しかしある種致命的なツッコミを許容することになります。

 

 

いや、アリババたちは「神」に打ち勝ったけど、その顛末は大高先生という「神」が決めたものじゃね?

自分たちでエンディングを勝ち取ってなくね?

 

 

という(意地悪)

 

いわば、テーマ性を追求したことでマギは「物語」として完成されたが、

同時に、

マギが誰かによって紡がれた「物語」であるという事実がそのテーマ性を阻害し始めた、

という状況です。

 

物語のテーマ性の臨界点に達したと言ってもいいかもしれません。

 

 

 

しかしながらこのマギ、この意地悪なツッコミすら、なんと克服しているのです。

 

 

 

カギは最終盤の展開です。

 

敵陣営の鎮圧がひと段落した最終盤では、シンドバットが新たな対立勢力となり、擬似的に神の力を手に入れます。そして、二度と「神」と呼ばれる存在が現れないよう、一旦世界をリセットしようと画策します。

 

一見「自分の道は自分で決める、神には頼らない」という主人公陣営の主張に反していないようには見えますが、シンドバット一人が世界の運命を握っている点で、矛盾をはらんだ主張ですね。

 

主人公陣営はシンドバットを阻止すべく動きますが、シンドバットは、自らが踏破したダンジョン7つを再現し、主人公陣営に挑ませます。

そのダンジョンのそれぞれで、主人公陣営に、この物語のテーマに直結する問いを投げかけるのです。

 

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それに対し、主人公陣営は、シンドバットと共にこの「マギ」という作品で起きたことを振り返り、シンドバットへの問いに答えていきます。

 

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そしてその議論の末に、アリババたちとシンドバットは、

「神と縁を切るのではなく、シンドバットのように神を殺すのではなく、神と対話する」

という、全く新しい結論を生み出します。

 

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そして、その結論を元に、新たな道へ進み出すのです。

このプロセスに34巻後半、35巻丸一冊を費やしています。一冊半、まるまるキャラ同士の議論です。

 

つまり、このマギという作品、

キャラ同士の物語の振り返り、そして議論を通してエンディングを導くことで、「あくまでキャラが自分たちで考えて、自力でこのエンディングを勝ち取った」という形式を維持しているのです。

 

これにより、キャラたちは物語の中の「神」を克服しただけでなく、現実世界の「神」(つまり作者)をも克服したことになります。

「自分たちのことは自分たちで決める」というテーマ性を徹底した結果、キャラたちは運命どころか、作者の手からもついに離れてしまったわけですね。

 

マギはついに「物語」の臨界点を突破してしまったのです。

 

 

 

4. おわりに

キャラたちの議論が完結した35巻を読み終わった時、すごいものを読んでしまった・・・これは・・・なんだ?と言葉を失ってしまいました。

 

2か月ほど前に完読し、ようやく当時の思いを言葉にすることができました。

 

他にもマギの魅力はたくさんあります。綺麗な絵、魔装のかっこよさ、ギャグのキレ、キャラの魅力・・・

特に白龍大好きなんですよ!白龍だけで一つ記事書けますよ!!!

 

ですが、今回はマギという作品全体に対する記事ということで、そのテーマにこだわった記事としました。

すでに一度全て読んだ方も、ぜひ2周目をしてみてください。

全てを知っているからこそ、特にアルマトラン編(過去編)を読んでいるからこそ、意味のわかるセリフが序盤からたくさん隠れていますので!!!!

 

かなり長い記事になりましたがここまで読んでいただき、ありがとうございました!

 

 

(終わり)