アタシポンコツサラリーマン

ポンコツサラリーマンが、マンガ・アニメについてつらつらと書きます。不定期更新ですが、気が向きましたらぜひぜひお立ち寄りを。

【マンガ】「あなたソレでいいんですか」がトゲだらけでおもしろい

こんにちは。いさおです。

 

先日実験的に書いた「青春の入口と出口を描く2作品から、青春を考える」が本ブログ歴代3位のアクセスで、とてもうれしい限りのいさおです。

 

いやそれでも各記事アクセス数2桁な超絶弱小ブログなのですが・・・

 

ああいうちょっと抽象的な、プチ哲学みたいなことを考えるのが大好きなので、ちょいちょいああいう記事も書いていけたらなあなんて考えてます。

そして、誰かの脳に内蔵されたアンテナにビビッと届けば、こんなにうれしいことはありません。

 

 

さて、今回は、イブニングで連載中である

 

「あなたソレでいいんですか」

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の紹介記事です!

本作、「どSな女子高生に向き合われてみませんか?」とキャッチーな言葉が踊っていますが、本記事のタイトルにあります通り、トゲのある、一筋縄ではいかない作品です。

裏表紙も見てみましょう。

 

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可愛げなJKが「セックスをしてあげます」とか言ってますね。

ここで「ああSっ気があるけれど結局主人公に気のあるJKと主人公がイチャイチャするよくあるやつね・・・」とかお思いになるなかれ。

このマンガ、そんなもんじゃないです。

 

 

1.どんなマンガ?

私がいろいろしゃべるより、ご自身で第1話を読んでいただくのが早いでしょう。

 

www.moae.jp

 

いかがでしたか?

 

結構ギャグ要素もありますし、何よりページを開くごとに、女の子の行動に驚かされる。そのジェットコースターみたいな展開が、まずこの作品の大きな魅力です。

 

しかしこの作品が与えてくれたのは、ジェットコースターみたいなスリルだけでしたか?

どこかバツの悪さ」のようなものを感じた方はいませんか?心の触れてほしくないところに手を突っ込まれたような・・・

 

そう、そのバツの悪さ」こそ、この作品のもう一つの魅力なのです。

もちろん超個人的意見ですが!!

 

ヒロインに包丁を持って襲いかかった須田くんは、「セックスをしませんか」というヒロインの提案を皮切りに、「あなたを殺します」という言葉の裏にある、その虚栄心を巧みに暴かれていきます。

しかもその虚栄心は、馴染みのないものではありません。人に相手にされない寂しさに対する逃避という、みんなが持っているようなごくごくありふれた、そしてなかなか自覚が難しい(自覚したくない)感情です。

 

あなたは、その寂しさを突かれて逃げ出した須田くんを笑えますか?

あなたも、寂しさを隠すためにカッコつけた経験が、一度くらいありませんか?

 

この作品は2話以降も同じ女の子が登場し、様々な事情を抱えた男性を、その滅茶苦茶な鋭い論理構成でひたすらやり込めていきます。

そんなこの作品を読んで行くと、女の子が男の子をやり込める愉快な様を楽しめると同時に、ふと、自分がこれまで見て見ぬふりしてきた自分の様々な急所を、次々にあぶり出される感覚に陥ります。この心のざわつきを楽しむのも、このマンガの効用の一つなのです。

 

かわいらしい女の子に悶えるのもよいですが、たまにはトゲだらけの女の子に触れて、ちょっぴりケガしてみませんか??

 

 

 

 

 

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(ここからはオススメ記事というよりこの作品についての自分勝手雑感コーナーです。ここまでで「お、このマンガ面白そうやんけ!と感じていただけましたら、今すぐこの記事のことは忘れてアマ◯ン↓へGO!!)

 

あなたソレでいいんですか(1) (イブニングKC)

あなたソレでいいんですか(1) (イブニングKC)

 

 


 

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2.  本作の「異端性」

「特定の異性(同性愛ものなら同性。以下『異性(同性)』と表現します。)とひたすら会話する」、という一話完結形式のマンガは、昨今多数存在します。特にtwitterで流れてくるマンガは、1ツイートで4枚しか画像を貼れない仕様上、特にこのタイプのものが多いのではないでしょうか。

 

こうしたマンガにおけるその「特定の異性(同性)」というのは、いわば読者の「理想」を体現したものが多いです。

主人公とその異性(同性)との会話やかけあいを見て、「ああこんな異性(同性)とこんな会話がしたい!こんないちゃいちゃがしたい・・・」とか、たとえ主人公に自己投影せずとも、「この二人のこのかけあい尊い・・・」となるわけです。

自分もこの手のマンガ、だいすきです(大声)

 

 

ここで、誤解を恐れず(正直めっちゃ恐い)言います。

以上の異性(同性)キャラは、いわば「読者の満足を実現するために、都合よく動かされる存在」になっています。

ツンデレ好きの人のために、ツンデレのキャラが提示され、幼い系が好きな人のために、幼い系キャラが提示される。

まず私たちの中で「異性(同性)の理想のムーブ」があって、それにキャラが合わせる形で、上記の作品は成立しています。(当然こうした作品を否定する意図は一切ありません。「理想の体現」は、創作の主な機能の一つです。むしろこうした作品は、創作の本分を果たしていると言えます。

 

しかし本作は、「特定の異性(BL、GLものなら同性)とひたすら会話する」という形式の作品でありながら、本作のヒロインは、上記の異性(同性)とは正反対の機能を果たしています

理想を体現するのではなく、むしろ、男の子の抱く理想(第1話では、「青春青春言ってる馬鹿どもとは違う、優れた存在としての自分」)の裏にあるみっともない感情を暴き、その理想を崩す存在。それが、本作のヒロインなのです。

 

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そこには、読者の希望通りのムーブは一切ありません。ただただ読者の入ってほしくない部分に入り込み、「あなたソレ(そんな理想に持ってるだけ)でいいんですか」、と語りかけてくる。

その異端性に、自分は特に魅力を感じました。

 

3.  その「異端性」は、実は本質をついている

 

 先ほど「異端性」と強い言葉を使いました。しかし、上記の本作のヒロイン像は別にトリッキーなものではなく、むしろ現実における「男の子にとっての女の子」の像を的確に再現しているのでは?、という話を最後にさせてください。

 

私たちはある「理想の自分」を持っていて、その「理想」であろうとしています。

ありていに言えば、常に「カッコつけている」んです。

 

では私たちは何で「カッコつけてる」んでしょう。

それは、とどのつまり、「モテたい」からです。

女の子にモテるために、私たちは理想を追い求めていきます。

 

だとすれば、そのカッコつけを暴いてみせるのも、常に女の子なんです。

男は自分のカッコつけと、その裏にあるカッコ悪さを、女の子との交流を通して初めて自覚できるんです。

そんなリアルな、男の子のゴールでありかつ天敵である「女の子」像を、本作のヒロインは、怖いほどに体現しています。

先ほどの「理想のムーブをしてくれない」という話もそうですが、創作のヒロインなのに、ほんとに容赦がない。しかしそれがいい・・・

 

 

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以上、「あなたソレでいいんですか」の記事でした!

後半は(後半だけか?というツッコミがここで入る)自分勝手に気ままに書きましたが、とにかくこのマンガ、「理想」の心地よさに溺れた私たちをドキッとさせてくる、魔力を帯びた一冊です。

日常のスパイスとして、あなたもこの一冊でドキッとしてみませんか?

 

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

 

(終わり)